聞こえが悪く(難聴)子どもや孫から補聴器をプレゼントされたものの、うまく使えずに放置してしまっている―。そのような経験はないだろうか。
一般社団法人長崎ベルヒアリングセンター(東京都港区)の今井喜章副理事長(認定補聴器技能者)は「難聴は必ず耳鼻科を受診し、補聴器装着の際はトレーニングを行う必要があります」と呼び掛ける。
◇治療できるか検査
耳から入った音は鼓膜に伝わり、内側にある三つの骨で増幅され、さらに奥の蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる場所で電気信号に変換され脳に伝わる。このうちのどこかに問題が生じると難聴になる。
今井副理事長は「難聴イコール補聴器装着ではなく、まず耳鼻科で治療可能か、補聴器で改善が見込めるのかなどを検査することが必要です」と強調する。その際、補聴器相談医の資格を持つ耳鼻科医を受診するとよい。
難聴の程度は〔1〕小さな声(25~39デシベル)が聞こえにくい軽度〔2〕普通の会話(40~69デシベル)が聞き取りづらい中等度〔3〕大きな声(70~89デシベル)でも聞こえづらい高度〔4〕耳元の大声(90デシベル以上)でも聞き取れない重度―と四つに分類される。
どのくらい小さい音が聞こえるかを測定する純音聴力検査や、言葉の聞き取りを測定する語音聴力検査などを医師が行い、算出された平均聴力から程度を診断する。これらの検査結果は、補聴器装着による改善効果が見込めるかどうかの判断材料にもなる。
◇すぐには聞こえない
同センターでは、医療機関と連携し、検査結果と患者の希望を考慮しながら補聴器のフィッティングを行っている。中には100万円以上する高額な機種もあるが、「音を取り入れる機能にはそれほど差はないので、自分の生活に合った機種を選ぶのがこつです」。
最も重要なのは装着前のトレーニングだ。「人間の耳は、不要と感じる音を排除したり逆に意識して聞いたり、フィルターをかけることができます。これは脳が行っている処理です。難聴はこの機能が衰えているので、補聴器を装着するといっぺんに音が入ってきてうるさく感じてしまいます」。そのため約3カ月間、実際に補聴器を使い微調節を加えながら、本来の聞こえ方に脳を慣らしていく。
厚生労働省の認知症施策推進総合戦略では、認知症の危険因子に難聴も加えられた。
今井副理事長は「補聴器は、認定補聴器技能者が在籍する店舗で購入すると安心です。自治体により助成金制度があるので問い合わせてみてください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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