冬の到来で心配になるのが肌の荒れや乾燥だ。対策としては丁寧な保湿などの手入れがあるが、方法を間違えたり必要な部位へのケアを忘れたりして、ニキビや吹き出物、ひび、あかぎれなどに悩まされる人は少なくない。「皮脂や保湿量が不足している中高年はもちろん、若い人も手入れ法を間違えばすぐに皮膚は荒れてしまう。適切な肌の手入れを欠かさないように」と、皮膚科の専門医は呼び掛けている。
「気温と湿度が下がる冬は、分泌される汗や皮脂が減少するため皮膚表面の乾燥が強まる。さらに職場や家庭の暖房なども加わると、年齢にかかわらずスキンケアが不十分な場合は肌荒れやあかぎれ、ニキビの悪化などの皮膚トラブルに襲われることになる。皮膚を清潔に保ちながら保湿を心掛けてほしい」。スキンケアに詳しい野村皮膚科医院（横浜市）の野村有子院長はこう強調する。
特に警戒が必要なのが、ニキビやあせもなどが出ている場合だ。このようなときは保湿だけでは症状が改善しないため、皮膚を清潔に保った上で炎症などの治療を受ける必要がある。「だからといって保湿が必要ないわけではなく、クリーム状の保湿剤ではなく、さらりとした化粧水などによる皮膚への水分補給が有効。必要に応じて乳液などを加えて」と野村院長。
もう一つ忘れていけないのが、メイクをしている場合だ。スキンケアの前、特に就寝前にはクレンジング剤できちんと化粧を落とした上で、通常の洗顔をしてきれいな皮膚にしてからケアをする手間が必要だ。野村院長は「メイクを落とさずに就寝するのは論外だが、ダブル洗顔でメイクや老廃物を落としてから、一層丁寧に保湿などのケアを心掛けてほしい。皮膚の状態が良くないとメイクもきれいには見えない」とアドバイス。さらに、近年増加しているメイクをする男性についても「女性に較べて皮脂の分泌が多いが、基本的に毎日の洗顔とケアは必要」と呼び掛けた。
ポイントとして注意が必要なのは、頬から口周辺と目の周囲。皮膚が薄いので、刺激の少ない保湿剤がいいという。さらに頬から顎にかけてはマスクによる肌荒れも深刻だ。「新型コロナの感染拡大が３年を超えても、なかなかマスクは外せない。マスクの不織布との摩擦は皮膚にダメージを与えている。マスクをする前にローションタイプの保湿剤を使用するなど丁寧な対応をした方がいい」と野村院長は話す。
顔以外でも悩まされる人が増えるのは、手指の霜焼けやあかぎれだ。これも感染症対策で手洗いやアルコールによる手指消毒の頻度が増え、負担に感じているからだろう。野村院長は、予防には市販のビタミンＥ含有のクリームを小まめに塗るよう勧めている。「就寝前に指や指の間だけでなく、手のひらや甲にまでたっぷり塗って綿の手袋をするとよい。少しでも痛みを感じた場合は、水仕事などにはビニールの手袋をして、一度皮膚科の医師の診療を受けること。あかぎれが治りにくい場合は、医学的な治療が必要」と野村院長は注意を喚起している。（了）
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