自宅など自分が安心できる場での会話に支障はないのに、学校や職場では話したくても話せない。そのような状態が続く不安症を「場面緘黙(かんもく)」という。多くは幼児期に発症し、成人までに自然に改善するとされる。長野大学社会福祉学部(長野県上田市)の高木潤野教授に話を聞いた。
場面緘黙
◇特定の場面で
小学生では500人に1人程度に見られる。対人関係で不安や緊張を感じやすい上に、入園・入学時のような話しづらい状況も影響し発症すると考えられている。
学校などの「場所」や授業中などの「場面」、家族以外といった「特定の人」と一緒だと話せなくなる。返事やあいさつだけならできることもあるが、「その子らしさを発揮できない状態にあると言えます」。字が書けない、体が動かない、学校に行けないといった困難を併せ持つことも多いという。
◇適切な対処で改善も
高木教授によると、家族や専門家による対処法は大きく分けて二つある。本人が安心して過ごせる環境を整えること、「話せた経験」を積むことだ。
まずは「人が多くいる場所に緊張する」「視線が怖い」など、苦手なことをよく理解する。
その上で本人とよく話し合い、相手や場所、活動を組み合わせてしゃべりやすい環境をつくっていく。例えば、学校に協力してもらい、本人が教師と個別に話せる時間を設けるなどの方法がある。
このような練習を行えば、半年から数年程度で改善することが多いという。支援を受けた人を追跡調査すると、8割以上が改善していたとする研究が複数ある。「適切な支援をすれば、より早く改善するでしょう」
一方、場面緘黙の人を支援する専門家の数が限られているという問題はある。それでも、本人や家族だけで悩みを抱え込んでしまうのは得策ではないと高木教授は指摘する。
当事者が子どもの場合は、保護者がまず教師に相談するとよい。「本人の思いをしっかり聞き取って先生に伝えましょう。成人しているなら、相談先として都道府県、指定都市にある発達障害者支援センターや、不安症の診療経験が豊富な精神科が候補となります」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
げんせん: medical.jiji.com