皮膚に「肥満細胞」という細胞が異常に増え、刺激を受けると赤い盛り上がり(膨疹=ぼうしん)が表れる「皮膚肥満細胞症」という珍しい病気がある。日本橋室町皮ふ科(東京都中央区)の上田有希子院長に話を聞いた。
◇刺激に反応しやすく
皮膚などにある肥満細胞はヒスタミンという物質を蓄えている。卵、牛乳、そばなど、アレルギーの原因物質が体内に入ると、肥満細胞がヒスタミンを放出し、膨疹、かゆみなどを引き起こす。
一方、皮膚がこすれる、体が急に温まるといったアレルギーとは無関係な刺激を受けた場合も肥満細胞がヒスタミンを放出してしまい、膨疹ができる。膨疹に続いて水膨れのようになることもある。
膨疹は手足、背中、脇腹など、全身のどこにでもでき、1個だけだったり、数え切れないほど多かったりする。数時間から長くても数日で消えるが、再発を繰り返す。その部分は茶褐色のしみのようになる。
◇飲み薬で治療
発症率は、皮膚以外の臓器にも肥満細胞が増えるタイプの「全身性肥満細胞症」と合わせると、30万人に2人程度とされる。
治療は、肥満細胞が放出したヒスタミンの働きをブロックして、膨疹やかゆみの発生を抑える「抗ヒスタミン薬」を内服するのが基本。その上で、普段の生活での膨疹の原因を見極めて、できるだけ避けるようにしたい。
「例えば、激しい運動、タオルで皮膚をこする、急な温度変化、原料にアルコールを含む菓子の摂取などが原因となった場合があり、注意することが大切です」
多くは2歳までに発症し、思春期までに自然治癒するが、成人になってから発症したり、膨疹の再発を繰り返したりするケースの自然治癒は少ないという。こうした場合について、「皮膚の状態を定期的にチェックし、病状に応じた治療を受けるために、通院を続けることが大切です」と上田院長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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