「土下座しろ。何分待たせるんだ」。患者が医療機関の職員に、高圧的な態度で理不尽な要求をしたり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする事例が増えている。そうした行為を繰り返す患者やその家族を「モンスターペイシェント」と呼ぶ。医療トラブルに詳しいフラクタル法律事務所(東京都港区)の田村勇人弁護士に話を聞いた。
◇大半は普通の患者
モンスターペイシェントになる人の特徴について、「ほとんどは、病気やけがを治してもらおうと思って来院した普通の患者さんで、比較的多いのは高齢の男性。例えば、会社では地位が高かった退職後の男性が思い通りにならず、暴言を吐いてしまうといったケースです」。
不満の内容で多いのは、「対応が悪い」「待ち時間が長い」「検査を受けたのに診断が決まらない」「治療しているのに症状が良くならない」など。行動としては、大声で怒鳴る、悪態をつく、診察の順番を繰り上げるよう強要するなどの行為に出る。インターネットの掲示板で、根拠のない悪口を何度も書き込む事例も増えているという。
ある調査によると、「モンスターペイシェントを経験したことがある」という医師は約7割に上る。「開業医院に限ると、ほぼ全ての医師やスタッフが経験しているのではないでしょうか」
◇反論せず不満な点を整理
モンスターペイシェントに対応する際、医療機関側はどういう点に気を付ければいいのだろうか。
「すぐに反論や説得、あるいは謝罪しようとせず、まずは不満があるという気持ちを受け入れ、共感することが大切。その上で、公平な視点で不満を丁寧に聞き取り整理します。それで患者さんの気持ちが治まることもあります」
患者の期待が医師の考えと大きく違っている場合があり、「医療側が十分なコミュニケーションを図ることで、モンスターペイシェントを生まないようにできると思います」。
それでも納得してもらえない場合は弁護士に相談する方法もある。「不当な要求には毅然(きぜん)とした態度で臨みます。診療を断ることも可能です」
また田村弁護士は「患者さんは治療を医師任せにせず、分からないことがあったら説明を求めることが大切です」とも指摘している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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